学校保健委員会授業 アサーションを用いた「伝え方」について

目次
学校では伝えきれないコミュニケーションの学びを広める
つい、言葉で伝えられずに、手が出てしまう子どもがいる中、人との関わりで自分の言葉で伝えられる子どもたちを育てたい、そんな先生方の思いから学校保健委員会の授業の企画はスタートしました。
『言葉のやり取りにはマナーがあること』を子どもたちに教えておく必要があります。
子ども同士の関係で気になるちょっとした上下関係。ともすれば当たり前のようになってしまう恐ろしさもあるものです。この子ちょっと強そうだから言えないよな、とか逆にこの子には言っても自分の言うことを聞き入れるだろうとか。そこからミスコミュニケーションが起こったり、いじめ問題に発展したりすることは少なくありません。
相手も大切に自分も大切に伝えるという方法は?
日本ではとかく、言わないことが美徳という考えがあります。「空気を読む」というのが恰好のニュアンスかも知れません。相手の立場や年齢が上だと、遠慮して言わない文化、これは日本人なら誰しも感じたことがあるのではないでしょうか。
大人社会の様子を観て学んだ子どもたちの中でも、どうやって伝えたらいいかわからなくて手が出てしまうという子もいるし、逆に言ってはまずいと思って言わない子もいる。
そこで、子どもたちにとっておきの方法を提案しました。コミュニケーションの中での「アサーション」という方法です。アサーションは自己表現の方法を指すのですが、自分の意見は相手がどんな立場でも伝えていいという考えです。
遠慮は無用。ただし、配慮が必要というもの。相手の気持ちをくんで伝えるという方法です。
アサーションを使った伝え方とは?
アサーションはこの3段階のステップを踏んでみてはどうでしょう。
1 自分の気もちに気づく。
2 相手に配慮しながら、自分の考えを言う。
3 相手の言うことも受け入れる。
上の枠を少しご説明しますね。例えば、相手が何かをしてほしい、やってほしいと提案してきた場合、1番のように自分がどうしたいかを考えます。そこで、もし自分が相手の提案や依頼を受け入れることができなかったら、もしくは望まなかったら断る権利があるのです。
そして2番のように、相手の好意や気持ちを大切にしながら伝えます。続いて、3番のように、もし代替え案が出せるならそれも提案することをお勧めします。
例を用いてご説明しますね。友達が「サッカーをして遊ぼう。」と言ったとします。
自分はサッカーではなく、教室で読書をしたいと思った場合、それがちょっと相手が強そうだなあと思った相手でも自分の言葉で、伝えようと教えました。
そんな時はこう言いますね。
「誘ってくれて、ありがとう。でも僕は今日は教室で本が読みたいんだ。また次の時は誘ってね。」
相手の気持ちを大切にしながら、まずはお礼を述べる。その後、自分の気持ちを伝える、さらに、別の機会に誘ってくれるよう提案する。
このようなアサーションを使った伝え方の基本を子供たちに教えます。
自己表現の方法には3タイプある?
実は自分のことを表現する場合3タイプにわかれるといわれています。
1 アグレッシブ 攻撃的
2 ノンアグレッシブ 非攻撃的 ノンアサーティブ 非主張的
3 アサーティブ 主張的
これを読んでくださっている方はご自身はどのタイプだと考えられますか。
講座やセミナー、授業では誰もが知っているキャラクターでこの3つを例えていくのですが、見ての通り、より良い表現方法は3番のアサーティブだとわかると思います。
先ほど述べた通り、日本人は案外2番、言わないことが美徳と教えられ、相手に合わせて何も言わない2番をとってしまうことがありがち。そんな日ごろの自分の表現方法をこんな場合はどうする?という項目を準備したアサーション度チェックで振り返ってみました。
気をつけたいポイント!!
ここでは大切なポイントをいくつか。
自分のことを伝えてもいいとは言いましたが、一番大切なのはその言い方ですね。
上から目線で「サッカーはやだし、そんなのやらんわ!」と言ったら相手の気持ちに配慮することにはなりません。
大人の研修でもやりますが、自分のアサーション度チェックをしたときに、自分は思いを伝えている、自己表現ができていると思った人は逆に要注意なのです!
なぜかといえば、それが上から目線で1番の攻撃的で超自己中心的になっている可能性があるわけです。
相手はあなたに対して断れなくて、なんでも受け入れないとまずいと思っているかもしれませんよ。
日ごろ、断るときにもどう伝えているか、振り返ってみるチェックをすると自分の考え方や伝え方がよくわかります。
このチェックで小学生の子も言いたいことをはっきり伝えているけど、強い言い方になってしまっていると気づいた子もいたようです。
こんな場面では何といったらいいのかな?ロールプレイング実践
適切な言い方を学んだあとはもちろん実践です。ロールプレイング実践。
子供たちの身の回りで起こる事象について場面を提案し、こんな時どう伝えたらいいの?と考え実際に友達同士実践してみます。
相手からの提案に対して自分が望まない場合、断ってもいい、というアサーティブな方法でやんわりと伝える言い方を実践できていた子が多かったです。もちろん、まだまだ、相手を受け止めて、さらに提案するという実践は難しいようでしたが。。。
日ごろから意識してアサーションの方法を使えるようになるとさらに素晴らしいとお伝えしました。
授業実践を通して
先生方からも「言いたいことが言えなくてすぐ手が出るのではなく、どうしたら伝えられるかの具体性が学べてとても良かった」と好評をいただきました。
家庭や学校でも実際は折々にご指導されているのでしょうが、第3者が伝えるのはまるで違った効果があると感じます。
また、子供たちの感想の中でも、こんな素晴らしい意見がありました。
「話し方で友達関係が変わるということがわかった」と。私たち講師はその子のことはわかりませんでしたが、先生方から見てもそんな感想を発表する子ではなかったようで、「あの子があんな感想をもってくれるなんて。」とびっくりされていました。
まとめ
その子が言ったように話し方、つまり伝え方を変えると友達関係が変わる、さらに言えば人間関係が変わる、ひいては人生そのものが変わる可能性をも秘めているのです。
子どもはもちろん、大人も学んだほうが得策なコミュニケーションのアサーションの使い方。ぜひ学ぶ機会をもってみると、今以上に人間関係を作るのが楽になるかもしれませんよ。